糖 × 熱 = おいしさの化学反応!その仕組みに迫る
1. はじめに:砂糖は加熱するとどう変わる?
砂糖はそのままでも甘くておいしいですが、加熱すると香りや色、風味が変化するのを知っていますか?
例えば…
プリンのカラメルソース → 砂糖を加熱すると茶色くなる
クッキーやパンの焼き色 → こんがりとした香ばしさが生まれる
コーヒーの香ばしさ → 砂糖の加熱が影響
これは、「キャラメル化」や「メイラード反応」という化学反応によるものです。
今回は、砂糖が加熱されるとどのように変化し、どんな食品に活かされているのかを詳しく解説していきます!
2. 砂糖の加熱による段階的変化
砂糖は加熱温度によって異なる変化を起こします。なぜ温度が上がると、砂糖の性質が変化するのか? ここで紹介する変化は、水に溶かした砂糖(砂糖水)を加熱した場合に見られるものです。砂糖水は加熱により水分が蒸発し、濃度が高くなることで見た目や質感が大きく変化していきます。
加熱温度が上がるにつれて水分が減少し、最終的には褐色化やカラメル化などの化学的な変化も起こるようになります。
以下の表では、砂糖水の加熱によって起こる代表的な変化を、温度ごとの段階と特徴にまとめています。
温度範囲(℃) | 段階 | 水分含有量(%) | 特徴 |
---|---|---|---|
103-105 | シロップ | 30-40 | 液体状、透明 |
107-115 | フォンダン | 20-30 | やわらかい砂糖のかたまり、ミルクキャンディなどに |
140 | タフィー | 10-20 | 噛むと弾力あり、引き伸ばせるやわらかい飴 |
165 | べっこう飴 | 5-10 | 硬くなり、カラメル化開始 |
165-180 | カラメルソース | 3-5 | 香ばしさが出る、焦がし風味 |
190 | カラメル | 0-3 | 苦みが強まり、コーラや醤油の着色料に利用 |
💡ポイント
- 加熱によって水分が減少し、状態がシロップから飴、カラメルへと段階的に変化する
- 温度が上がるにつれて飴は硬くなり、香ばしさや焦げた風味が現れる
- 165℃付近から色づきが始まり、カラメルソースやカラメルのような状態に変化する
- 190℃では苦味のある色調が強くなり、コーラやしょうゆなどの着色用途にも使われる
3. 熱が引き出す甘さと香ばしさの科学
砂糖水は加熱されることで、水分が徐々に蒸発し、シロップから飴、そしてカラメルへと段階的に変化していきます。
このような状態変化に加えて、温度が上がるにつれて砂糖そのものが化学変化を起こすことも重要なポイントです。
この章では、温度ごとに見られる砂糖の化学変化と特徴に注目します。
① 100~140℃:ショ糖の溶解と分解
- ショ糖(C₁₂H₂₂O₁₁)が水に溶け、シロップ状になる
- 140℃付近でグルコース(C₆H₁₂O₆)とフルクトース(C₆H₁₂O₆)に分解
- タフィーやキャンディーの食感が生まれる
② 165℃:べっこう飴の形成と褐色化の始まり
- グルコースやフルクトースがさらに熱分解し、ヒドロキシメチルフルフラール(HMF)が生成し、褐色になる
- べっこう飴やキャラメルの風味が形成される
③ 165~180℃:カラメル化反応
- フラノン類やアルデヒド類が生成する
- 甘く香ばしい香りの成分が生まれる
- プリンのカラメルソースのようなほろ苦さが出る
④ 190℃以上:炭化(焦げる)
- メラノイジン(褐色物質)が生成する
- 強い苦味が出る → コーラやしょうゆの着色に利用される

ショ糖の溶解からカラメル化、さらに炭化までの過程を示しています
4. キャラメル化とメイラード反応の違い
砂糖の加熱でよく語られる「キャラメル化」と「メイラード反応」。
キャラメル化は、砂糖だけを加熱したときに起こる化学変化で、褐色化と香ばしい香りの原因になります。一方、メイラード反応は、砂糖とアミノ酸が一緒に加熱されることで発生する化学反応です。パンの焼き色や、肉の香ばしさの原因となる現象です
反応名 | 起こる温度 | 主な特徴 | |
キャラメル化 | 砂糖だけを加熱したとき | 約160℃以上 | 甘く香ばしい香り、 褐色化 |
メイラード反応 | 砂糖とタンパク質が一緒に加熱されたとき | 約120℃以上 | 焼き色、香ばしさ、 風味の向上 |
📝 キャラメル化が起こる食品例
- プリンのカラメル
- 焦がしバター(フィナンシェ)
- クレームブリュレの表面
📝 メイラード反応が起こる食品例
- パンの焼き色(トースト)
- 焼肉やステーキの焼き目
- コーヒー豆の焙煎
💡ポイント
- キャラメル化は「砂糖だけ」で起こる
- メイラード反応は「砂糖とタンパク質」が必要
- パンやステーキの焼き色はメイラード反応によるもの
5. プロっぽく仕上がる!砂糖の“香ばしさ”を引き出すコツ
砂糖の加熱変化を知ると、料理の仕上がりを調整できます。
📝 キャラメル化を活用
- プリンのカラメルを作る → 砂糖を180℃まで加熱してほろ苦い風味を作る
- 焦がしバター(フィナンシェ) → 砂糖を適度に加熱し、風味をアップさせる
📝 メイラード反応を活用
- クッキーやパンの焼き色を調整 → 低温でじっくり焼くと均一な焼き色に
- 肉に砂糖を使う → 砂糖を下味に使うと、焼き色が付きやすくなる
6. まとめ:砂糖の加熱は料理の決め手!
- 砂糖は温度によって、水分が減っていくことで状態が変化し、やわらかい飴から香ばしい焦げ色のある仕上がりまで、さまざまに姿を変える
- 温度が上がると、甘さや香り、色合いに変化が現れ、風味が豊かになる
- 加熱のしかたを工夫することで、料理にほどよい香ばしさや色づきを加えることができる
砂糖の“変化”を知れば、料理の幅がぐんと広がります。次にプリンやクッキーを作るときは、ぜひ温度と色の変化にも注目してみてください!
おうちのキッチンが、ちょっとした“実験室”になります!
参考資料
- 農林水産省 砂糖のすべて ~原料の生産から製品まで~
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kanmi_sigen/attach/pdf/index-3.pdf - 中山弘典・木村万紀子『科学でわかるお菓子の「なぜ?」 基本の生地と材料のQ&A231』辻製菓専門学校監修、柴田書店
- 大越 ひろ編著『健康と調理のサイエンス 第4版:調理科学と健康の接点』学文社
- 佐藤成美『おいしさの科学』講談社(講談社現代新書)