日本人の“自由糖”はどこから来る?
1. はじめに:自由糖とは何か
ここ数回のコラムでは、飲料のラベルから砂糖量を換算する方法(2025年8月26日号)や、異性化糖と砂糖との違い(2025年9月2日号)、さらには日本発の技術史(2025年9月9日号)を紹介してきました。
今回は視点を少し変えて、「日本人の自由糖は一体どこから来ているのか?」を考えてみましょう。
なお、2025年4月29日号のコラムで紹介した通り、WHO(世界保健機関)は「自由糖(free sugars)」を、次のように定義しています。
- 食品や飲料に加えられた砂糖・異性化糖・シロップ
- はちみつや果汁など、自然に存在していても“遊離した形”の糖
つまり、炭水化物全体ではなく「余分に加えられたり、分離された糖」が対象になります。
日本人の食卓を振り返ると、この自由糖は “飲み物・おやつ・調味料” という3つの場面で積み上がっていきます。
特に異性化糖は、冷たい飲料で甘味を感じやすい性質から清涼飲料水に多用され、さらに加工食品や調味料にも広く使われています。
こうした用途の広がりが、日本人の自由糖摂取量を増やす要因となっています。
2. 主な摂取源の可視化
自由糖は、特定の食品から一度に大量に摂るのではなく、日常生活のさまざまな場面で少しずつ積み上がっていきます。
表1に示す通り、日本の成人(20〜69歳)を対象とした調査では、自由糖の摂取源にはいくつかの特徴が見られます。
まず大きな割合を占めるのは、菓子類や加工食品(約30%)です。チョコレートやクッキーなどのお菓子に加えて、菓子パンや甘味のある加工食品も摂取源となっています。
次に目立つのが、飲料(約20%)です。缶コーヒーや清涼飲料水は短時間で多量の自由糖を摂りやすく、習慣的に飲む人では摂取量を押し上げる要因になります。
さらに、調味料(約15%)が続きます。ケチャップ大さじ1に約4 g、ソース大さじ1に約3 gの糖が含まれ、食卓で何気なく使ううちに摂取量が積み重なります。調味料に由来する糖は“隠れた糖”として見落とされやすく、成人にとって注意すべき供給源です。
そのほか、果物加工品(約10%)や加糖ヨーグルトといった乳製品(約10%)からの摂取もあり、惣菜やレトルト食品などのその他食品(約15%)も合わせて一定の割合を占めています。
このように成人では、「菓子類・加工食品」「飲料」「調味料」の3つが主要な摂取源であり、健康的に見える食品や日常的に使う調味料が、自由糖摂取を増やす背景になっています。
一方で、同じ研究者グループは子どもは「おやつ+飲料」が中心であり、成人との摂取源の違いが際立っていると報告しています。
表1 日本の成人(20〜69歳)における自由糖の摂取源の割合
摂取源 | おおよその割合(%)※ |
菓子類・加工食品 | 30 |
飲料(缶コーヒー・清涼飲料水等) | 20 |
調味料(ケチャップ・ソース・ドレッシング等) | 15 |
果物加工品(缶詰・ドライフルーツ等) | 10 |
乳製品(加糖ヨーグルト・乳飲料等) | 10 |
その他食品(惣菜・レトルト食品等) | 15 |
※ Fujiwaraらの研究(2017,)のデータをもとに、主要カテゴリーに再編・調整した数値
3. 年齢・生活シーン別の特徴
自由糖の摂取源は、年齢や生活シーンによって大きく変わります。
子どもでは、先に示したように「おやつ」と「飲料」が中心です。体格が小さいため基準を超えやすく、ジュースや菓子類を日常的に摂取すると、すぐに推奨量を上回ってしまいます。
若年層は、エナジードリンクやコンビニスイーツなど、手軽に購入できる食品・飲料からの摂取が増える傾向があります。夜間や勉強中、仕事中の“習慣的な摂取”がリスクを高めます。
中高年層になると、外食や惣菜、調味料を通じて“気づかない糖”を多く摂るようになります。たとえばソースやドレッシングに含まれる糖は、味の濃さに隠れて見過ごされがちです。
高齢者では、嗜好品としての和菓子や甘い飲料を楽しむ方が多く見られます。糖尿病や生活習慣病を抱える人も多いため、楽しみながらも摂取量には注意が必要です。
たとえば1日の食事を振り返ると、
- 朝:菓子パン+市販のカフェオレ飲料
- 昼:缶コーヒー
- 夜:市販のサラダに付属のドレッシング
このような組み合わせであっても、合計すれば容易にWHOの基準値(理想25g/上限50g)を超えてしまう可能性があります。特に飲料や調味料を組み合わせると、想像以上に自由糖が積み上がりやすい点に注意が必要です。
年齢や生活のリズムに応じて、自由糖の入り口は変化します。自分や家族の「どの場面で摂りすぎているか」を把握することが、第一歩となります。
4. ムリなく減らす工夫
自由糖で大事なのは、“種類よりも量と頻度”です。必ずしもゼロにする必要はなく、日常の中でどれくらい摂っているかを意識して管理することが大切です。そのうえで、ちょっとした工夫で摂取量を減らすことができます。
- 飲料を1日1本減らす:缶コーヒーや清涼飲料を、お茶や炭酸水に置き換えるだけで大きな差になります。
- 調味料を少し控える:ケチャップやソースは、かける量を“ひとさじ減らす”意識を持ちましょう。
- お菓子の頻度を見直す:小分けにする、シェアする、週末だけにするなど、工夫次第で無理なく減らせます。
- 「ゼロ」「低糖」表示をうのみにしない:制度上ゼロと表示されていても、実際には微量の糖が含まれていることがあります。
ちょっとした宿題として、1週間だけ飲み物の記録をつけて合計してみましょう。
缶やペットボトルには「炭水化物量(g)」が表示されているので、その数値をそのまま記録すれば十分です。
清涼飲料や缶コーヒーなどは食物繊維をほとんど含まないため、炭水化物量 ≒ 糖類量と考えられます。
数字にして合計すると、自分がどれだけ摂っているかが実感できるはずです。
詳しい換算方法は、2025年8月26日号のコラムを参照してください。
5. まとめ
日本人の自由糖は、飲料・おやつ・調味料・加工食品の積み重ねから生まれます。成人では特に、調味料や加工食品の比率が高い点が特徴的でした。
大切なのは、種類よりも「どこから・どれくらい・どんな頻度で」摂っているかを意識することです。
摂取源を見える化すれば、自分に合った改善ポイントが見つかります。
日々のちょっとした工夫が、自由糖との上手な付き合い方につながります。
参考資料
- 世界保健機関(WHO)(2015). 「Guideline: Sugars intake for adults and children」
https://www.who.int/publications/i/item/9789241549028 - 農林水産省農産局地域作物課 異性化糖をめぐる状況について
https://www.maff.go.jp/j/seisan/tokusan/kansho/iseikato/attach/pdf/iseikato-2.pdf - A. Fujiwara et al. (2017). Estimation of total, added and free sugar intakes in Japanese adults using a newly developed food composition database. Proceedings of the Nutrition Society, 76 (OCE4), E196.
- A. Fujiwara et al. (2022). Association between Food Sources of Free Sugars and Weight Status among Children and Adolescents in Japan: The 2016 National Health and Nutrition Survey, Japan. Nutrients, 14, 3659.