体験教室から見えてきた、カルサイラボの教室の考え方
1. カルサイラボの教室について
料理教室を始めるにあたって、最初に考えていたのは、「何を教えるか」よりも、「どんな時間をつくりたいか」でした。
上手に作れるようになることや、同じものを再現できるようになることは、もちろん大切です。
ただ、それを最初の目標には置いていませんでした。
先日の体験教室は、そうした考え方が、実際のやりとりの中でどんな形になるのかを見ていく時間でもありました。
今回は、その体験を手がかりに、カルサイラボの教室の考え方を、少し整理してみたいと思います。
2. カルサイラボは「料理を教える場所」ではない
「料理教室」と聞くと、手順を学び、同じように作れるようになる場を思い浮かべる方も多いかもしれません。
作り方を知ることや、うまく仕上げるための工夫は、もちろん大切です。
その上で、カルサイラボでは、それを教室の中心には置いていません。
何をどの順番でやるか、どれが正解かを先に示すよりも、
実際に手を動かしながら、考え、比べ、言葉にする時間を大切にしています。
その点で、カルサイラボは、一般的な「料理を教える場所」とは、少し違う立ち位置にあるのかもしれません。
教室では、料理の中で起きていることを、できるだけ言葉にして説明します。
ただし、理屈を先に理解する必要はありません。
まずやってみて、「あ、違う」と感じる。
そのあとで、「なぜそうなったのか」を一緒にたどっていく。
学校の理科の授業になじめなかった人でも、料理を仕事にしていなくても、感じたことから考えることはできます。
カルサイラボが大切にしているのは、そうした考え始めるきっかけです。
3. 大切にしているのは「考えながら手を動かす時間」
カルサイラボの教室で、いちばん大切にしているのは、「考えながら手を動かす時間」です。
あらかじめ答えを聞いてから動くのではなく、まずやってみる。
様子を見て、感じたことを言葉にしてみる。
先日の体験教室でも、そうした時間が、特別に説明しなくても自然に生まれていました。
「どちらが好みか」「何が違うと感じたか」「なぜそう思ったのか」
正解を決めるためではなく、自分の感覚を確かめるためのやりとりが続いていたように思います。
料理は、手順を覚えるだけでも成立します。
けれど、考えながら手を動かすことで、その場にいる人それぞれの判断や感覚が残ります。
カルサイラボでは、そうした時間こそが体験の中心だと考えています。
また、この教室をつくる背景には、私自身のこれまでの働き方もあります。
組織の中で、判断を求められ、役割を果たし続けてきた時間が、長くありました。
だからこそ今は、ここに来た時間だけでも、すぐに答えを出したり、評価を気にしたりせず、
いつもとは少し違う視点で考えられる場でありたいと思っています。
料理をしながら手を動かし、考えることと感じることを行き来する中で、
気持ちが少し緩んでいく。
カルサイラボが、そんな時間を過ごせる場所になればうれしいです。
4. 「正解を教えない」という選択
カルサイラボの教室では、「こうすれば正解です」と答えを先に示すことを、あまりしません。
それは、難しくしたいからでも、出し惜しみしたいからでもありません。
正解を先に受け取ると、手の動きや判断が「再現」に寄ってしまうからです。
一方で、答えが見えていない状態で手を動かすと、小さな違いや変化に、自然と目が向きます。
「今の状態はどうだろう」「さっきと何が違うだろう」「このやり方は、自分に合っているだろうか」
そうした問いは手を動かす中で、自然と浮かんでくるものです。
その余地を残すために、あえて答えを前に出さない、という選択をしています。
私は料理人ではありません。
長年の経験に裏打ちされた技や勘をそのまま伝えることはできません。
その代わり、条件を変えて試したり、変化を一緒に眺めたりすることはできます。
正解を再現するよりも、考え方の道筋を共有する。
それが、カルサイラボの立ち位置です。
5. 少人数・小さな場でやる理由
カルサイラボの教室は、最初から少人数で行うことを前提にしています。
多くの人に一度に伝えるほうが、効率はよいかもしれません。
一方で、考えながら手を動かす時間を大切にすると、人数が増えるほど、その余白は狭くなってしまいます。
少人数であれば、一人ひとりの手元や反応に目が向きます。
同じものを作っていても、感じ方や判断が違うことにも気づきやすくなります。
また、自分の言葉で話し、人の言葉を聞くためには、落ち着いた間が必要です。
カルサイラボでは、時間を詰め込みすぎず、あえて小さな場を選んでいます。
考える余地が残っていること。
それが、この教室のかたちを決める大きな理由の一つです。
6. カルサイラボの教室は、まだ途中にある
ここまで書いてきたように、カルサイラボの教室には、はっきりとした完成形があるわけではありません。
やり方や進め方は、体験を重ねる中で、少しずつ見えてくるものだと思っています。
教室を始めるにあたって、開催場所となる自宅のキッチンも一から見直しました。
現代的な設備を導入し、使い勝手のよい道具や食器を揃えています。
調理環境や道具、食器の使い心地も含めて、何かの参考になればと思っています。
カルサイラボの教室は、決まった型をなぞる場所ではなく、一緒に考えながら形をつくっていく場でありたい。
そんな思いを持ちながら、これからも、少しずつ続けていくつもりです。


