焼き餃子の皮を自分で作ろう!【簡易比較実験編】~粉と水温で、どこまで食感は変わるのか?~
1. はじめに:今回は“実験編”です!
前回の2025年7月8日号のコラムでは、小麦粉の種類や水温によって、餃子の皮の仕上がりがどのように変わるのかを、調理科学の視点から整理しました。
でも、やはり「食べてみないと違いはわからない」ですよね。
今回はその理論をもとに、いよいよ実践。
実際に3パターンの配合を試し、各3個ずつ、計9個の焼き餃子を作って食べ比べてみました。
さらに、市販の皮でも同じ餡を包んでみて、手作りとの違いをあらためて確認しました。
「粉や水温が違うと本当に食感が変わるのか?」
その答えを、写真とともにご紹介します。
2. 実験の条件と配合
今回試したのは、小麦粉の種類と水温の組み合わせで、もっとも特徴が異なりそうな3パターンです。
試験名 | 粉配合 | 水温 |
A | 薄力粉 100% | 熱湯 |
B | 強力粉 100%(※グルテン量が多くなるよう調整) | 冷水 |
C | ブレンド(強力粉 50%+薄力粉 50%) | 熱湯 |
Bの強力粉100%+冷水は、グルテンがしっかり形成されるように調整し、コシや弾力が強い皮を再現しています。
各条件の工程は以下の通り統一しました。
- 粉量:各30 g
- 水量:15 g(加水率50%)
- こね時間:5分
- ねかせ時間:30分
- 成型:各3枚(約10 g/枚)
手作り初心者でも取り組みやすい、“お試し実験”の分量感です。
3. 比較に使った餡(シンプル仕様)
餡は、皮の食感の違いを際立たせるために極力シンプルな配合にしました。
材料 | 分量 |
赤身ひき肉 | 60 g |
キャベツ(生) | 30 g |
塩 | 0.5 g |
ごま油 | 小さじ1 |
おろし生姜 | 少々 |
片栗粉 | 小さじ1/2 |
手順
- キャベツをみじん切りにし、塩少々(分量外)を振って10分置き、水気をしっかり絞る。
- ボウルに赤身ひき肉、塩、ごま油、おろし生姜、片栗粉を入れてよく練る。
- キャベツを加えて全体が均一になるまで混ぜる。
- 約10 gずつ、9等分する。
シンプルな味付けなので、皮の食感や風味の違いがはっきり出ます。
4. 焼き方は全種共通!
焼き方は、すべての皮で条件を揃えました。
市販の餃子と同じようなフライパン蒸し焼きスタイルです。
- フライパンに油をひき、9個の餃子を並べて中火で2分焼く(焼き色をつける)
- 水 30 mL を入れ、すぐに蓋をして3分蒸し焼き
- 蓋を開けて水分を飛ばし、仕上げにごま油を回しかけて1分焼き上げる
ごま油を最後に回しかけることで、香ばしい風味と焼き目がしっかり出るように仕上げました。
5. 焼き上がりと断面
焼き上がった餃子を並べてみると、見た目にも違いが見えてきました。
今回の焼き条件はすべて統一したにもかかわらず、皮の種類や水温の違いで、焼き色のつき方や皮の膨らみ方に明確な差が出ました。
▶ 写真1:焼き上がり全体

焼き方の条件を揃えても、皮の特性で焼き色に差が出ました。
薄力粉はやわらかめの焼き色、強力粉とブレンドは濃いめの焼き色になりました。
薄力粉+熱湯は、グルテン量が少なく、水和が進みにくい性質からか、膨らみが控えめで焼き色もやや薄め。一方、強力粉+冷水は、グルテンがしっかり形成されて弾力が強く、焼き色も濃く表面がパリッと焼き締まる印象でした。
ブレンドの皮はその中間の仕上がりで、焼き色・膨らみのバランスが取れた見た目になりました。
また、断面をカットしてみると、皮の厚みや餡とのバランスがよくわかりました。
▶ 写真2:断面

断面からも、皮と餡の様子がわかります。
薄力粉の皮はやわらかめ、強力粉はしっかり、ブレンドはモチモチしていました。
- A(薄力粉+熱湯):皮がやわらかく、餡とのなじみがよくふっくら
- B(強力粉+冷水):皮がしっかりしていて厚みも感じられ、噛みごたえが強そう
- C(ブレンド+熱湯):やや厚みはあるが、餡とのバランスが良く、見た目も食べやすそう
皮が厚いと餡との一体感が弱くなり、皮が薄いと餡のジューシーさが際立つことをあらためて実感しました。ブレンドの皮はその中間で、程よい厚みとモチモチ感、餡とのなじみも良いバランスでした。
今回の実験では、最も軽めだったのがA(薄力粉+熱湯)、最も重たかったのがB(強力粉+冷水)、そしてバランスのいいのがC(ブレンド+熱湯)でした。これは、試験前に予想していた傾向ともおおむね一致する結果です。
こうして写真とともに記録しておくことで、見た目・食感・包みやすさの関係が可視化でき、再現実験や応用にも役立つと感じました。
6. 食感・包みやすさの違い
実際に包んで焼いてみると、皮の包みやすさ・焼き色・食感には明確な違いがありました。
🥟 A(薄力粉+熱湯)
- 包みやすさ:やわらかい
- 焼き色:やや薄め
- 食感:軽めのモチモチ
- コメント:包みやすく、軽やかな食感
🥟 B(強力粉+冷水)
- 包みやすさ:硬い
- 焼き色:濃い目
- 食感:重たく硬い
- コメント:皮の存在感が強く、餡の風味がやや負ける
🥟 C(ブレンド+熱湯)
- 包みやすさ:扱いやすい
- 焼き色:少し濃い目
- 食感:モチモチ+適度にパリっと感も
- コメント:バランス良好で家庭餃子に最適
特にBの強力粉+冷水は、こねる段階から硬く、包む際も伸ばしづらかったです。
焼きはパリっとしますが、噛みごたえが強すぎて皮の存在感が前に出すぎる印象でした。
一方、Aの薄力粉+熱湯はやわらかく、包みやすさも良好。焼き上がりもモチっとした食感で、一般的な家庭の餃子に近い仕上がりでした。
そして、Cのブレンド+熱湯は包みやすさ、焼き色、食感のバランスが取れていて、「家庭の餃子として最も適している」と感じました。
7. 市販品の皮との比較
さらに、市販の餃子皮でも同じ餡を包んで焼いてみました。
やはり手作りとは全く違う感触で、市販品は薄く均一で、包みやすさ・焼きやすさともに完成度が高いです。
特に、冷めても皮がやわらかく、しっとり感が続くのが印象的でした。
これは、酒精、加工でん粉、pH調整剤などの工夫によるものと考えられます。これらの添加により、保水性ややわらかさ、製造後の品質維持がコントロールされているのでしょう。
ただし、手作りの皮は、粉と水、塩だけのシンプルな材料。
その分、小麦粉の種類や水温を変えるだけで食感が大きく変わることを舌で確かめられるのが最大の魅力です。
手作りの皮は厚みが出やすいため、薄く均一にのばす技術や、餡とのバランス調整も今後の課題だと感じました。
8. まとめ
今回の実験を通じて、手作り餃子の皮は小麦粉の種類や水温で、食感や扱いやすさが大きく変わることが実感できました。
市販品の安定感や柔らかさはさすがだと思いますが、手作りには、粉の選び方や条件を調整し、自分好みの「我が家の餃子」を探す楽しさがあります。
今後は、皮の薄さを均一にする工夫や、餡の量・サイズの調整にも挑戦していきたいと思います。
市販品にはない、“我が家流の餃子”を目指して、さらに工夫と実験を続ける予定です。