遺伝子組換え食品では、何を確認しているのか ― 変化した部分を評価するという考え方 ―

1. はじめに

前回のコラムでは、遺伝子組換え食品の評価では、従来食品と比べて、
どこが変わったのかを確認することが出発点になる、という考え方を見てきました。

遺伝子組換え食品というと、「遺伝子組換え」という言葉そのものに注目してしまいがちです。

しかし、安全性評価で大切なのは、その言葉だけで判断することではありません。

・従来食品と比べて、どのような性質が新たに加わったのか。
・その変化が、健康への悪影響につながる可能性があるのか。
・そのために、どのような項目を確認する必要があるのか。

こうした点を一つずつ見ていくことが大切です。

今回は、前回の続きとして、遺伝子組換え食品の評価では、
具体的にどのような点が確認されているのかを見ていきたいと思います。

特に今回は、評価で確認される項目の中から、新しく作られるたんぱく質、
アレルギーとの関係、栄養成分やもともと含まれている成分の変化を中心に見ていきます。

2. 新しく作られるたんぱく質を見る

遺伝子組換え食品では、目的とする性質を持たせるために、
新しくたんぱく質が作られることがあります。

たとえば、害虫に強い性質や、特定の除草剤の影響を受けにくい性質を持たせる場合、
その性質に関わるたんぱく質が作られることがあります。

安全性評価では、まず、この新しく作られるたんぱく質が
どのようなものなのかを確認します。

・そのたんぱく質は、どのような働きを持っているのか。
・人が食べたときに、健康への悪影響につながる性質がないか。
・体の中でどのように消化されると考えられるのか。
・健康への悪影響が知られているたんぱく質と似た性質を持っていないか。

こうした点を確認していきます。

ここで大切なのは、「新しくたんぱく質が作られる」ということ自体が、
ただちに健康への悪影響を意味するわけではないということです。

食品には、もともと多くのたんぱく質が含まれています。
大切なのは、新しく作られるたんぱく質について、その性質を確認し、
健康への悪影響につながる可能性があるかどうかを見ることです。

つまり、遺伝子組換え食品の評価では、従来食品との違いとして
新しく作られるたんぱく質がある場合、その部分を具体的に確認していきます。

3. アレルギーとの関係を見る

遺伝子組換え食品の評価で、もう一つ重要になるのが、アレルギーとの関係です。
食物アレルギーは、食品に含まれる特定のたんぱく質に対して、
体の免疫が反応することで起こります。
そのため、遺伝子組換えによって新しくたんぱく質が作られる場合には、
そのたんぱく質がアレルギーを起こしやすい性質を持っていないかを
確認する必要があります。

たとえば、

・既に知られているアレルゲンと似た性質を持っていないか。
・そのたんぱく質が、どのような生物に由来するものなのか。
・食経験のある食品に含まれるたんぱく質と、どのような関係にあるのか。

こうした点を確認していきます。

もちろん、アレルギーは人によって反応が異なるため、
すべてを完全に予測できるわけではありません。

しかし、既に知られているアレルゲンとの類似性や、たんぱく質の由来などを調べることで、
アレルギーを起こしやすい性質がないかを確認します。
必要に応じて、胃や腸の中で分解されやすいかといった性質も確認されます。

ここでも大切なのは、「遺伝子組換えだからアレルギーが心配」と漠然と考えるのではなく、
新しく作られるたんぱく質に、アレルギーにつながる性質があるかどうかを見ることです。

4. 栄養成分やもともと含まれる成分の変化を見る

遺伝子組換え食品の評価では、新しく作られるたんぱく質だけを
見るわけではありません。
従来食品と比べて、主要な成分や、もともと含まれている成分に
大きな変化がないかも確認します。

食品には、たんぱく質、脂質、炭水化物、ビタミン、ミネラルなど、
さまざまな成分が含まれています。
遺伝子組換えによって新しい性質を持たせたときに、
こうした主要な成分が大きく変わっていないかを
確認することが大切です。

たとえば、大豆であれば、たんぱく質や脂質などの主要な成分を見ます。
トウモロコシであれば、炭水化物や脂質、たんぱく質などの成分を確認します。

また、食品には、もともと含まれている成分の中に、
多くなりすぎると健康への悪影響が問題になるものもあります。

そのような成分の量が、従来食品と比べて
大きく変わっていないかも確認します。
主要な成分やもともと含まれている成分を見るときにも、
従来食品との比較が手がかりになります。

食品に含まれるすべての成分を一つ一つ評価するのではなく、
従来食品と比べて、遺伝子組換えによって変化した可能性のある部分に注目します。
そして、その変化が健康への悪影響につながる可能性があるかどうかを
確認していきます。

5. 必要な項目を組み合わせて判断する

ここまで見てきたように、遺伝子組換え食品の評価では、
いくつかの観点から確認が行われます。

・新しく作られるたんぱく質は、どのような働きを持っているのか。
・アレルギーを起こしやすい性質がないか。
・主要な栄養成分や、もともと食品に含まれている成分に大きな変化がないか。

このように、従来食品と比べて変化した可能性のある部分について、
必要な項目を一つずつ確認していきます。

そして、それらの確認結果を合わせて、健康への悪影響につながる
可能性があるかどうかを判断します。

つまり、遺伝子組換え食品の評価は、「遺伝子組換えだから」という言葉だけで
判断しているわけではありません。

・どのような性質が加わったのか。
・その性質に関わるたんぱく質は、どのようなものなのか。
・従来食品と比べて、成分に大きな違いがないか。

こうした点を確認したうえで、食品として食べることによって
健康への悪影響につながる可能性があるかどうかを見ていきます。

ここで大切なのは、従来食品との比較は、
リスク評価と切り離されたものではないということです。

従来食品と比べることは、評価すべき違いを見つけるための出発点です。

食品添加物や農薬では、対象となる物質について、

・どのような健康への悪影響が考えられるのか、
・どのくらいの量で影響が現れるのか、
・実際にどのくらい摂取するのか

を見てきました。

遺伝子組換え食品では、まず従来食品と比べて、
変化した可能性のある部分を見つけます。
そして、その部分について、新しく作られるたんぱく質の性質、
アレルギーとの関係、成分の変化など、必要な項目を確認します。

評価対象のとらえ方は違いますが、「何を見ているのか」
「どのような健康への悪影響が考えられるのか」
「実際に食べることで健康への悪影響につながる可能性があるのか」を
分けて考える点では、共通する部分があります。

この流れを整理すると、次のようになります。

6. おわりに

今回は、遺伝子組換え食品の評価で、具体的にどのような点が
確認されているのかを見てきました。

前回は、従来食品と比べて、どこが変わったのかを見ることが
出発点になると説明しました。

今回は、その変化について、新しく作られるたんぱく質、
アレルギーとの関係、栄養成分やもともと含まれている成分の変化などを
確認することを見てきました。

新しい性質が加わること自体が、ただちに健康への悪影響を
意味するわけではありません。

大切なのは、その変化が健康への悪影響につながる可能性があるのかを、
必要な項目ごとに確認することです。

食品の安全性を考えるときには、「遺伝子組換えだから」という言葉だけで
判断するのではなく、何が変わったのか、その変化について
何を確認しているのかを見ていくことが大切です。

次回は、食品添加物や遺伝子組換え食品とは少し性質の違う例として、
遊離糖類を取り上げます。

遊離糖類は、食品添加物や遺伝子組換え食品とは少し異なり、
私たちの食生活全体の中で摂取量を考える必要がある成分です。
摂り方や量によっては、健康への悪影響が問題になることがあります。

次回は、遊離糖類に関わる健康影響を、栄養や食事の観点から
どのように考えればよいのかを見ていきたいと思います。

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7. 参考資料

・厚生労働省「遺伝子組換え食品」
 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/bio/idenshi/index.html

・厚生労働省「遺伝子組換え食品の安全性に関する審査」
  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/idenshi/anzen/anzen.html

・食品安全委員会「遺伝子組換え食品等」
  https://www.fsc.go.jp/foodsafetyinfo_map/kumikae.html

・食品安全委員会「遺伝子組換え食品等専門調査会」
  https://www.fsc.go.jp/senmon/idensi/