ナッツの砂糖がけを、実際に作って比べてみた ― 透明な砂糖液が白くなり、琥珀色になり、サブレになるまで ―

1.はじめに

先週のコラムでは、砂糖と水を煮詰めて作るナッツの砂糖がけについて、白い結晶の糖衣と琥珀色の糖衣を比べてみたいと書きました。
今回は、ローストしたくるみとカシューナッツを使って試作をしました。

透明な砂糖液をナッツに加えると、砂糖はあっという間に白い結晶になりました。
さらに、白い砂糖がけナッツを加熱すると、今度は琥珀色の糖衣になりました。

そして、その琥珀色の砂糖がけナッツをサブレに加えて焼いてみました。
同じナッツと砂糖から、どのような味わいの違いが生まれたのでしょうか。

2.透明な砂糖液を、ナッツに加える

水と砂糖を小鍋に入れ、115℃前後まで煮詰めました。
砂糖液は、加熱を始めたときには無色透明です。
水分が蒸発するにつれて濃くなり、泡の様子や粘りも変わっていきます。
今回は温度計を使いながら、砂糖液の変化を確かめました。

写真① 115℃前後まで煮詰めた砂糖液。温度を確かめながら加熱しました。

ローストしたくるみとカシューナッツを乾いたボウルに入れ、熱い砂糖液を加えました。
耐熱性のゴムベラでナッツ全体に砂糖液が行き渡るように混ぜ続けます。

3.混ぜるうちに、白い砂糖がけナッツになった

はじめは透明だった砂糖液が、混ぜているうちに白っぽくなり、ナッツの表面に細かな結晶が付いていきました。
115℃前後まで煮詰めた砂糖液は、砂糖が高い濃度で溶けた状態です。
これが冷めながら混ぜられると、溶けていた砂糖が再び細かな結晶として現れます。
細かな結晶が多くできると、光がさまざまな方向に散らばるため、ナッツを覆う砂糖の層は白く見えるようになります。

こうして、白い砂糖がけナッツができました。
砂糖は甘味を付けるために加えたものですが、ここでは高濃度の砂糖液から析出した結晶として、ナッツの表面に白い糖衣をつくっています。

写真② 透明だった砂糖液をナッツに加え、混ぜ続けると、白い結晶が表面を包みました。

4.さらに加熱すると、琥珀色の砂糖がけナッツになった

次に、白い砂糖がけナッツを鍋に戻し、弱めの火で再び加熱しました。
白い結晶は次第に溶け、ナッツの表面につやが出てきます。
さらに加熱を続けると、糖衣は琥珀色に色づき、香ばしい香りが立ち始めました。
色づき始めてからの変化は早く、糖衣の色には少しずつ違いも見られました。
ナッツももう一度熱を受けるため、砂糖の色や香りだけでなく、ナッツそのものの香ばしさも加わったように感じました。
今回は、薄い琥珀色の段階で火を止めました。

写真③ 白い砂糖がけナッツを再加熱してできた、琥珀色の砂糖がけナッツ。

5.甘さに、香ばしさとほろ苦さが加わった

白い砂糖がけナッツと、琥珀色の砂糖がけナッツを食べ比べてみました。
琥珀色の砂糖がけナッツは、白い砂糖がけナッツに比べて香ばしく、ほろ苦さが加わりました。
砂糖の量は同じでも、甘さだけが前に出るのではなく、香ばしさやほろ苦さと重なり、甘さに奥行きができたように感じました。

白い砂糖がけナッツには、結晶らしいさらりとした見た目と食感があります。
一方、琥珀色の砂糖がけナッツには、つやのある糖衣とパリッとした食感、加熱によって生まれた香りがあります。
同じ量の砂糖でも、白い結晶の糖衣にするか、琥珀色まで加熱するかで、甘さの感じ方は変わりました。

6.琥珀色の砂糖がけナッツを、サブレに加える

最後に、琥珀色の砂糖がけナッツを粗く刻み、サブレの生地に加えて焼きました。

写真④ 琥珀色の砂糖がけナッツを粗く刻んで加えた、焼き上がりのサブレ。

焼き上がったサブレはサクサクとしていて、砂糖がけナッツをそのまま食べたときとは違うおいしさがありました。
バターの風味と軽い食感の中に、ナッツの香ばしさ、糖衣の甘さ、わずかなほろ苦さがなじみ、全体が一つのお菓子としてまとまりました。

白い砂糖がけナッツにも、結晶ならではのおいしさがあります。
けれども今回のサブレには、香ばしさとほろ苦さをもつ琥珀色の砂糖がけナッツがよく合いました。
バターの風味やサクサクとした生地になじみ、味わいに奥行きが生まれたように感じます。

7.作って比べることで見えてきたこと

今回の試作では、同じ砂糖とナッツが、加熱のしかたと組み合わせによって、三つの異なる味わいへと変わる様子を見ることができました。

透明な砂糖液をナッツに加えると、白い結晶の砂糖がけナッツになりました。
さらに加熱すると、琥珀色の砂糖がけナッツになりました。

そして、それをサブレに加えると、焼き菓子の中に新しいおいしさが生まれました。
これまで「砂糖と甘さ」シリーズでは、砂糖の量を変えることで、お菓子の仕上がりがどう変わるのかを見てきました。

今回は、砂糖の量を変えなくても、砂糖をどのような状態で使うかによって、見た目、香り、食感、甘さの感じ方が変わることを確かめることができました。
これからも、実際に作り、比べ、味わいながら、砂糖と甘さの関係を見ていきたいと思います。

カルサイラボでは、実際に作って、比べてみることで、料理の中で起きている変化を楽しむ体験教室を行っています。
現在は「粉と水」をテーマに、粉と水の量や温度、作り方の違いが仕上がりにどう表れるのかを、一緒に作りながら確かめています。
ご興味がありましたら、体験教室のご案内もぜひご覧ください。
体験教室のご案内はこちら

8.参考文献

・中山弘典・木村万紀子(2009)『科学でわかるお菓子の「なぜ?」―基本の生地と材料のQ&A231』柴田書店.