自作と市販のあんこを食べ比べてみた ― 甘さだけでは分からない、あんこのおいしさ ―
1.今度は市販のあんこと比べてみました
前回のコラムでは、砂糖の量を変えた3種類の粒あんを作り、食べ比べました。
乾燥小豆に対して砂糖50%、70%、100%の3種類では、70%がちょうどよい甘さでした。
砂糖が少ないほど小豆の風味を強く感じられましたが、それが最もおいしいとは限らないことが分かりました。
では、市販のあんこは、自作の粒あんとどのように違うのでしょうか。
今回は、自作の粒あん1種類と市販品3種類、合わせて4種類のあんこを食べ比べました。
比較したのは、次の4種類です。
- A:自作の粒あん(乾燥小豆に対して砂糖70%)
- B:市販のゆであずき(大手食品メーカー)
- C:市販の粒あん①(精米店)
- D:市販の粒あん②(甘味処)
自作の粒あんは、乾燥小豆250gに砂糖175gを加えて作りました。
まずはそのまま食べ、次に餅と合わせて、甘さや小豆の風味、食感、全体のおいしさを比較しました。

左からA:自作の粒あん、B:市販のゆであずき、C・D:市販の粒あん。
2.見た目も、食感も、それぞれ違う
4種類のあんこを並べてみると、見た目にも違いがありました。
Aの自作の粒あんとCの市販の粒あんは、比較的よく似た仕上がりでした。
小豆の粒が残り、しっかりとした食感があります。
Bのゆであずきは、やや緩めの仕上がりで、なめらかな口当たりでした。
一方、Dの粒あんは、つやがあり、粒の存在感もはっきりしています。
甘さも強く感じられたことから、試食中には、糖液の使い方などに工夫があるのかもしれないという話にもなりました。
もちろん、見た目や味わいだけで、使用している原材料や製法を特定することはできません。
こうして並べてみると、ひとくちに「あんこ」といっても、水分の状態や粒の残り方はさまざまです。
甘さだけでなく、見た目や口当たりも、あんこのおいしさを考えるうえで大切な要素なのだと感じました。
3.甘さと小豆の風味を比べてみると
まず、甘さの強さを比べました。
最も甘く感じられたのは、BのゆであずきとDの粒あんでした。
Bのゆであずきは、原材料表示を見ると、砂糖、小豆、食塩の3つだけです。
砂糖が小豆より先に記載されている通り、実際に食べても甘さがはっきりしています。
ただ、甘さは強いものの、くどさはなく、思いのほか軽やかな味わいでした。
原材料がシンプルで、大量に製造され、身近なお店で手頃な価格で購入できることも、Bの魅力だと思います。
一方、Aの自作の粒あんは、甘さが控えめで、小豆の風味を感じやすい仕上がりでした。
Cの粒あんは、自作の粒あんとよく似た印象でしたが、もう少し甘さがあり、味わいに深みを感じました。
食塩が甘さを引き立てているのかもしれません。
小豆らしい風味を最も強く感じたのは、Cの粒あんでした。
Dの粒あんは、甘さが強い一方で、独特の深みがありました。
単に甘いというだけではない、家庭で作るあんことは違った味わいが印象的でした。
こうして比べると、同じように甘さが強く感じられても、小豆の風味や後味は異なります。
あんこの味わいは、砂糖の量だけでは説明できないことが分かります。
4.あんこは、何と合わせるかでも変わる?
そのまま食べた場合、最もおいしいと感じたのは、Dの粒あんでした。
甘さは強めでしたが、小豆の風味や粒の感じ、味わいの深みなど、家庭ではなかなか再現できないおいしさがあるように思いました。
ただ、一緒に食べ比べる中では、Cの粒あんの方が好みだという感想も聞かれました。
Cは、自作の粒あんより少し甘く、小豆の風味がしっかり感じられるあんこです。
餅やご飯と合わせたときに、ちょうどよい味わいになるのではないかと思いました。
実際に餅と合わせて食べてみると、最もおいしいと感じたのはCの粒あんでした。
また、Dの粒あんも、餅と合わせることで、よりおいしく感じられたという感想がありました。
今回の4種類を食べ比べてみると、それぞれに合う食べ方があるのではないかとも感じました。
Cはおはぎが人気のお店で購入したあんこ、Dはあんみつで知られる甘味処のあんこです。
それぞれのお店で提供されているお菓子を思い浮かべると、Cは餅やご飯と、Dは寒天や果物などと合わせたときに、持ち味が生きるような味わいなのかもしれません。
また、やや緩めで甘さがはっきりしているBのゆであずきは、ぜんざいのような食べ方に合いそうです。
こうして考えると、あんこのおいしさは、それだけを食べたときの評価では決まらないようです。
何と組み合わせるかによって、おいしさの評価も変わることが、今回の食べ比べで確かめられました。
5.あんこのおいしさは、甘さだけでは決まらない
今回の食べ比べでは、自作の粒あんと市販品、それぞれに異なるおいしさを感じました。
Aは、砂糖の量を乾燥小豆の70%にして作り、小豆の風味を生かしました。
これに近い味わいながら、もう少し甘さと深みを感じたC、甘さやつやに独特の特徴があったD、そして、甘さが強いのにくどさを感じなかったB。
それぞれに違った持ち味がありました。
前回の試作では、砂糖70%のあんこがちょうどよい甘さでした。
しかし、今回の比較では、それよりも甘く感じられるあんこを、最もおいしいと感じることもありました。
前回は砂糖の量を変えて比較しましたが、今回は市販品も含め、小豆の種類や煮方、水分量などの条件をそろえずに比較しています。
また、そのまま食べるのか、餅と合わせるのかによっても、おいしさの印象は変わりました。
3回にわたってあんこの甘さを考えてきたことで、さまざまな発見がありました。
砂糖の量だけでなく、小豆の風味や粒の感じ、口当たり、後味、さらには食べ方も、おいしさの印象に関わっていることを実感しました。
「甘い」と「おいしい」は必ずしも同じではない。
そして、「ちょうどよい甘さ」も、あんこそのものの味わいだけでなく、何と一緒に食べるかによって変わるのかもしれません。
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これまでの「粉と水の温度ストーリー」では、粉と水の量や温度、作り方の違いが仕上がりにどう表れるのかを、一緒に作りながら確かめてきました。
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6.参考文献
・田澤英二郎・加野博之・松本苗緒・村上正人(2018)「どら焼きの小豆餡の美味しさに寄与する香気成分について」『日本食生活学会誌』29巻1号,45–52頁.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/29/1/29_45/_pdf
・中澤洋三・小暮早紀・宮下慎一郎・南和広・相根義昌(2022)「小豆餡の嗜好性と水分および糖度との関係」『日本食品科学工学会誌』69巻10号,473–480頁.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/69/10/69_473/_pdf

