あんこの甘さを比べてみた ― 小豆の風味と、ちょうどよい甘さの関係 ―
1.砂糖の量を変えて、あんこを作ってみました
前回のコラムでは、砂糖の量を変えると、あんこの甘さだけでなく、小豆の風味や口当たり、おいしさも変わるのではないかと考えました。
そこで今回は、砂糖の量を変えた3種類の粒あんを作り、食べ比べてみました。
小豆150gをまとめて柔らかく煮てから3等分し、それぞれに砂糖25g、35g、50gを加えました。乾燥小豆50gに対して、砂糖の割合が50%、70%、100%となる計算です。
小豆をまとめて煮ることで豆の煮え具合をそろえ、砂糖の種類も同じものを使いました。
煮詰め時間はそれぞれ異なりましたが、仕上がりの硬さができるだけ同じになるようにしました。

2.砂糖が増えると、小豆の風味はどうなる?
出来上がった3種類の粒あんを、そのまま食べたり、餅と合わせたりして、甘さや小豆の風味、後味などを比べました。
| 比較項目 | 砂糖25 g | 砂糖35 g | 砂糖50 g |
| 甘さの強さ | 弱い | 中くらい | 強い |
| 小豆の香り | 強い | 中くらい | 弱い |
| 小豆らしい風味 | 強い | 中くらい | 弱い |
| 後味に残る甘さ | 弱い | 中くらい | 強い |
| そのまま食べたときの甘さ | もう少し甘いといい | ちょうどいい | やや甘すぎる |
| 餅と合わせたときの甘さ | もう少し甘いといい | ちょうどいい | やや甘すぎる |
| 冷めた後の硬さ | ちょうどいい | ちょうどいい | ちょうどいい |
今回の食べ比べでは、砂糖の量が多くなるほど、甘さが強く感じられました。
一方、小豆の香りや小豆らしい風味は、砂糖が少ないものほど強く感じられました。
砂糖25gの粒あんは、小豆の風味がはっきりしていましたが、50gでは甘さが前に出て、小豆らしさは弱く感じられました。
35gは、その中間でした。
ただし、これは砂糖によって小豆の香りそのものが減ったという意味ではありません。
甘さが強くなることで、小豆の香りや風味の感じ方が変わった可能性があります。
また、今回は煮詰め時間も異なるため、砂糖の量だけによる違いとは断定できません。
3.小豆の風味が強ければ、いちばんおいしい?
今回の食べ比べで、ちょうどよい甘さだと感じたのは、砂糖35gの粒あんでした。
砂糖25gは、小豆の香りや風味が最も強く感じられましたが、そのまま食べるには、もう少し甘さが欲しいと思いました。
反対に、砂糖50gではやや甘すぎると感じ、小豆の風味も弱く感じられました。
その中間の砂糖35gは、甘さと小豆の風味のバランスがよく、そのまま食べても、餅と合わせても、ちょうどよい甘さでした。
小豆の風味を強く感じられることは、あんこの魅力の一つです。
しかし、小豆の風味が最も強いことと、あんことして最もおいしく感じることは、必ずしも同じではないようです。
今回の試作では、小豆の風味と甘さのバランスが、おいしさを考えるうえで大切だと感じました。
4.砂糖の量と、あんこの硬さ
砂糖の量を変えると、甘さだけでなく、あんこの硬さや粘りにも違いが出ると考えられます。
今回の試作では、3種類とも同じような硬さに仕上がるように煮詰めました。
その際、砂糖50gのあんこが最も早く仕上がり、25gのあんこが最も時間を要しました。
砂糖の量によって、同じような硬さに仕上げるまでの時間が違ったことは、興味深い結果でした。
冷めた後の硬さを比べると、3種類とも食べるにはちょうどよい硬さでした。
ただし、あんこの硬さは砂糖の量だけでなく、水分量や煮詰め方にも左右されます。
今回は煮詰め時間を調整しているため、砂糖の量だけで硬さがどう変わるかまでは分かりません。
今回の食べ比べでは、硬さよりも、甘さと小豆の風味の違いが印象に残る結果になりました。
5.「甘さ控えめ」が、いつもおいしいとは限らない
今回の食べ比べでは、乾燥小豆に対して砂糖70%のあんこが、ちょうどよい甘さでした。
もちろん、これは今回の材料と作り方、そして食べ比べたときの好みによる結果です。
誰にとっても70%が最適というわけではありません。
砂糖を減らすと、小豆の風味を強く感じられる一方で、甘さが物足りなくなることもあります。
反対に、砂糖を増やすと、甘さが強くなり、小豆の風味が感じにくくなることもあります。
今回の試作で感じたのは、砂糖をできるだけ減らすことでも、甘さを強くすることでもなく、甘さと小豆の風味のバランスが大切だということです。
同じ小豆を使っても、砂糖の量を変えることで、味わいの印象が変わります。
「甘い」と「おいしい」は必ずしも同じではない。
今回の食べ比べは、そんなことを改めて考える機会になりました。
カルサイラボでは、実際に作って、比べてみることで、料理の中で起きている変化を楽しむ体験教室を企画しています。
これまでの「粉と水の温度ストーリー」では、粉と水の量や温度、作り方の違いが仕上がりにどう表れるのかを、一緒に作りながら確かめてきました。
今後の体験教室については、開催日程が決まり次第、ホームページでお知らせします。
6.参考文献
・田澤英二郎・加野博之・松本苗緒・村上正人(2018)「どら焼きの小豆餡の美味しさに寄与する香気成分について」『日本食生活学会誌』29巻1号,45–52頁.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jisdh/29/1/29_45/_pdf
・中澤洋三・小暮早紀・宮下慎一郎・南和広・相根義昌(2022)「小豆餡の嗜好性と水分および糖度との関係」『日本食品科学工学会誌』69巻10号,473–480頁.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/nskkk/69/10/69_473/_pdf
