砂糖の量を変えると、プリンはどう変わるのか ― 甘さだけでなく、固まり方にも目を向ける ―

1. 今度は、プリンで比べてみる

前回のコラムでは、プレーンなマフィンを使って、砂糖の量を変えて作り比べました。
砂糖を20g、30g、40gと変えてみると、甘さだけでなく、焼く前の生地の状態や焼き上がりの高さ、表面の形、食感などにも違いが見られました。

そこで今回は、マフィンとはまったく違う料理で試してみることにしました。
使ったのは、卵、牛乳、砂糖を主な材料とするプリンです。
プリンが固まるのは、卵に含まれるたんぱく質が加熱によって変化するためです。

では、砂糖の量を変えると、プリンの甘さだけでなく、固まり方や食感にも違いが表れるのでしょうか。
砂糖の量だけを変えた3種類のプリンを作り、甘さとともに、固まり方や食感がどのように変わるのかを比べてみることにしました。

2. 砂糖15g、25g、35gで比べてみる

今回は、牛乳130mL、卵50gに対して、砂糖の量を15g、25g、35gと変えた3種類のプリンを作りました。

A:砂糖15g
B:砂糖25g
C:砂糖35g

そのほかの材料や作り方、加熱条件などは、できるだけ同じにそろえました。
プリン液を同じ大きさの容器に入れ、天板に湯を張り、160℃のオーブンで25分程度焼きました。

砂糖の量を増やせば、甘さが強くなることは想像できます。
では、固まり方はどうなるのでしょうか。

作る前に、

「砂糖が多くなるとかたくなる?」
「それとも、やわらかくなる?」
「あまり変わらない?」

と予想してから、3種類を作り比べてみました。

3. 焼き上がりは、あまり違わない?

3種類のプリンが焼き上がりました。

写真② 焼き上がったプリン:左からA(15g)、B(25g)、C(35g)

並べてみると、見た目には大きな違いはありませんでした。
C(35g)は、ほかの2つよりやや高さがあるようにも見えます。
ただし、今回は、入れたプリン液の量や焼き上がりの高さを測定したわけではないため、この違いが砂糖の量によるものかどうかまでは分かりません。

少なくとも写真を見る限り、前回のマフィンのような、はっきりとした外観の違いは見られませんでした。
ところが、実際に食べ比べてみると、思っていた以上に違いがありました。

4. 食べてみると、固まり方が違った

まず感じたのは、もちろん甘さの違いです。
A(15g)は甘さが控えめで、B(25g)、C(35g)と砂糖が増えるにつれて甘さも強くなりました。
これは予想していた違いです。

驚いたのは、固まり方と食感の違いでした。
Aは、3種類の中ではしっかりとかたく固まっていました。
Bは、その中間くらいの食感でした。
Cは、Aと比べると明らかにやわらかく、なめらかに感じられました。

見た目にはそれほど違わなかった3種類ですが、スプーンを入れ、口に入れてみると、違いは思っていた以上にはっきりしていました。
砂糖を増やせば甘くなることは予想していました。
それ以上に印象に残ったのは、砂糖の量によってプリンの固まり方や食感にも、思っていた以上の違いが表れたことです。

5. なぜ、砂糖が多いとやわらかくなるのだろう

では、なぜ砂糖の量によって、プリンの固まり方に違いが表れたのでしょうか。

プリンが固まるのは、卵に含まれるたんぱく質が加熱によって変化し、互いにつながっていくためです。
砂糖は甘味をつけるだけでなく、この卵たんぱく質の熱による変化にも影響します。
砂糖が加わると、卵たんぱく質が熱によって凝固する温度が高くなるとされています。
つまり、砂糖が多いほど、同じ条件で加熱した場合には凝固が進みにくくなります。

今回、卵と牛乳の量や加熱条件をできるだけそろえたところ、A(15g)はしっかりとかために、C(35g)はやわらかくなめらかに感じられました。
この違いには、こうした砂糖が卵の熱凝固に影響する性質が関係していると考えられます。
実際に、砂糖の添加量が増えると、卵の凝固後の硬さが低下することも報告されています。

砂糖はプリンの中でも、ただ「甘くする」だけではなかったのです。

6. 「いちばん甘い」と「いちばんおいしい」は同じ?

もう一つ、今回の食べ比べで面白かったことがありました。
3種類の中でもっとも甘かったのは、もちろんCです。
けれども、「どれがおいしいか」については、意見が分かれました。

一緒に食べ比べた人の中には、Bがいちばんおいしいと感じた人もいました。
甘さと食感のバランスがちょうどよかったようです。

一方、私はCがいちばんおいしいと感じました。
甘さだけでなく、やわらかくなめらかな食感が好みに合っていました。

同じ3種類を食べ比べても、「おいしい」と感じるものは同じではありませんでした。
甘さの好みだけでなく、やわらかさやなめらかさなどの食感も、「おいしい」と感じることに関わっているようです。
「いちばん甘い」と「いちばんおいしい」は、必ずしも同じではないようです。

7. 砂糖の量は、「どんなプリンにしたいか」にもつながる

今回、砂糖15g、25g、35gのプリンを作り比べてみると、砂糖の量によって変わったのは甘さだけではありませんでした。
固まり方にも違いが表れ、Aはしっかりとかために、Cはやわらかくなめらかに感じられました。

そして、Bをおいしいと感じる人もいれば、Cをおいしいと感じる人もいました。
そう考えると、プリンに入れる砂糖の量を決めることは、単に「どのくらい甘くするか」を決めることではなさそうです。

しっかりしたプリンにしたいのか。
やわらかく、なめらかなプリンにしたいのか。
そして、自分にはどのくらいの甘さがちょうどよいのか。

砂糖の量を考えるときには、甘さだけでなく、どんな食感にしたいのかにも目を向けることができそうです。

今回プリンを作り比べてみることで、砂糖が甘さだけでなく、卵の固まり方や食感にも関わっていることが見えてきました。
これからも実際に作って、比べて、味わいながら、料理の中での砂糖の働きと、自分にとっての「ちょうどよい甘さ」を探っていきたいと思います。

「条件を少し変えて、仕上がりを比べてみる」という見方は、「粉と水」シリーズにも通じています。
ご興味がありましたら、こちらもあわせてご覧ください。

8. 参考文献

・村田安代・斉田由美子・松元文子(1976)「卵液の熱凝固について(第2報)―添加物の凝固温度に及ぼす影響ならびに卵液予備加熱・牛乳濃度の相違が物理的性状等に及ぼす影響について―」家政学雑誌, 27(6), 412-417.
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1951/27/6/27_6_412/_article/-char/ja/

・粟津原宏子(1982)「卵白および卵黄の熱凝固について―食塩,砂糖の添加による影響―」調理科学, 15(2), 114-118.
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1968/15/2/15_114/_article/-char/ja/