砂糖を減らすと、シフォンケーキはどう変わる? ― 甘さだけでなく、ふわふわ感にも目を向ける ―

1.基準のシフォンから、砂糖を減らしてみる

前回のコラムでは、砂糖の量を変えて比べる前に、まず基準となるシフォンケーキをつくりました。

何度か試作してできあがったのは、ふんわりと軽く、驚くほどふわふわしたシフォンケーキ。
甘さは控えめですが、何もつけなくても十分おいしく、翌日になってもふんわりした食感が残っていました。

そこで今回は、このシフォンケーキを基準にして、砂糖の量を減らしてみることにしました。
砂糖を減らせば、甘さが控えめになることは想像できます。
でも、変わるのは甘さだけなのでしょうか。

シフォンケーキのふわふわした食感を支えているのが、卵白を泡立ててつくるメレンゲです。
そのメレンゲにも砂糖を加えます。

そこで、今回はメレンゲに加える砂糖を少しずつ減らして、甘さだけでなく、ふわふわ感にも違いが表れるのかを比べてみることにしました。

2.20g、30g、40gで比べてみる

基準のシフォンケーキでは、卵黄生地に砂糖12g、メレンゲに砂糖40gを使っています。
今回は卵黄生地の配合は変えず、メレンゲに加える砂糖だけを変えました。

試作 メレンゲの砂糖(g) 卵黄生地の砂糖(g) 砂糖の合計(g)
A 20 12 32
B 30 12 42
C 40 12 52

つまり、メレンゲに加える砂糖を、基準の40gから30g、20gへと減らしていきます。
20gは基準の半分です。

卵黄生地はまとめて作って3等分し、卵白も重量をそろえて分けました。
メレンゲはそれぞれ別に作り、砂糖は泡立て始めてから3回に分けて加えました。
10cmのシフォン型を使い、各条件2台ずつ、合計6台を作りました。
十分に予熱したオーブンで、6台を一緒に焼きました。
材料や作り方はできるだけそろえました。

作っている途中で、まず気づいたのがメレンゲの違いでした。
A(20g)は、B(30g)、C(40g)に比べると、泡のきめがやや粗く、つやも少なめ。
角もやややわらかく感じられました。
Bはその中間くらい。
Cでは、きめが細かく、つやがあり、しっかりとしたメレンゲになりました。

では、焼き上がったシフォンケーキには、どのような違いが表れたのでしょうか。

3焼き上がりは、意外によく似ている

6台を同じオーブンに入れ、180℃で30分焼きました。

写真① 型に入った焼き上がり 左からA:20g、B:30g、C:40g

並べてみると、思っていたほど大きな違いはありません。

高さを測ってみると、

A 99mm
B 100mm
C 100mm

でした。

メレンゲに加える砂糖を40gから20gまで減らしても、今回の試作では、焼き上がりの高さはほとんど変わりませんでした。

一方、焼き色は、A、B、Cの順に濃く見えました。
さらに、型から外して断面を比べてみました。

写真② 3種類の断面 左からA:20g、B:30g、C:40g

3種類とも細かな気泡が広がり、大きな空洞や目立ったつぶれは見られませんでした。
今回観察した範囲では、気泡の大きさやそろい方、きめの細かさにも、はっきりとした違いは見られませんでした。
高さもほぼ同じ。断面もよく似ています。

ここまで見ると、「砂糖を減らしても、それほど変わらないのでは?」と思えてきます。
ところが、食べてみると少し違いました。

4.でも、食べてみると違った

まず、予想したとおり、甘さが違いました。
Aはかなり甘さが控えめ。B、Cと砂糖が増えるにつれて、甘さもはっきりしてきました。
でも、違ったのは甘さだけではありません。

Aは、Cに比べると少しかために感じました。
一方で、押したときのふんわりとした弾力や、口の中でほどけるような軽さは弱く感じられました。
BはAよりやわらかく、ふわふわ感もありました。
Cはやわらかく、3種類の中ではもっともふわふわした食感に感じられました。
しっとり感は3種類ともありましたが、口どけはAよりB、Cの方がよく感じられました。

見た目や高さには大きな違いがないのに、食べてみると違う。
今回、特に面白いと感じたところです。

5砂糖は、メレンゲや食感にも関わっている

では、こうした違いをどのように考えたらよいのでしょうか。
今回参考にしたお菓子づくりの解説書では、砂糖は甘味をつけるだけでなく、卵の泡立ちや、できた泡の安定性にも関わることが説明されています。
また、砂糖の量を変えると、焼き上がった生地の状態や、硬さ、口あたりなどにも違いが出ることがあります。

今回の試作でも、A、B、Cでメレンゲの様子に違いがあり、食べてみるとAはややかために、Cはよりふわふわと感じられました。
ただし、今回の試作だけから、こうした違いの理由を一つに決めることはできません。
泡立て方や混ぜ方など、すべての条件をまったく同じにすることは難しいからです。
そのため、今回見られた違いが、すべて砂糖の量によるものだとまでは言えません。

それでも、砂糖は「甘くする」だけでなく、メレンゲや焼き上がった生地の状態にも関わっているようです。
今回の食べ比べで感じた違いを考える、一つの手がかりになりそうです。

6「いちばんおいしい」は同じではなかった

では、3種類のうち、どれがいちばんおいしかったのでしょうか。

今回は、二人で食べ比べました。
私がいちばんおいしいと感じたのはCでしたが、もう一人はBを選びました。
Cは、やわらかく、ふわふわしていて、口どけのよいところが私の好みに合いました。

一方、Bでもやわらかく、ふわふわした食感があり、Cより甘さは控えめです。
同じ3種類を食べても、「いちばんおいしい」と感じる砂糖の量は同じではありませんでした。
砂糖は、多ければよい、少なければよい、というものではなさそうです。

どのくらいの甘さが好きなのか。
どんな食感をおいしいと感じるのか。

その組み合わせによって、自分にとっての「ちょうどよい砂糖の量」も変わるのだと思います。

7砂糖を減らすとき、何を見る?

今回、基準のシフォンケーキから、メレンゲに加える砂糖を40g、30g、20gと減らして比べてみました。

意外だったのは、20gまで減らしても、高さや断面には大きな違いが見られなかったことです。
でも、作っている途中のメレンゲには違いが見え、食べてみると、やわらかさやふわふわ感、口どけにも違いを感じました。

砂糖を減らすときには、つい「何g減らせるか」という数字に目が向きます。
でも、料理やお菓子の中では、

砂糖を減らしたら、甘さ以外に何が変わるのか。
そして、その変化を自分はどう感じるのか。

そこまで一緒に見てみると、自分にとっての「ちょうどよい」が見えてきます。

どれが正解ということではありません。
作って、比べて、味わってみる。

その中から、自分にとっての「ちょうどよい甘さ」を見つけていく。
砂糖との付き合い方を考えるとき、そんな方法もあってよいのではないでしょうか。

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8参考文献

・川染節江・山野善正(1991)「バタースポンジケーキのテクスチャーに及ぼす砂糖含量の影響」日本家政学会誌, 42(1), 53–60.
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jhej1987/42/1/42_1_53/_pdf

・中山弘典・木村万紀子(2009)『科学でわかるお菓子の「なぜ?」―基本の生地と材料のQ&A231』柴田書店.